ゴールデントライアングルには、泊まらず、ソンテウで30分程の、チェンセーンという街に宿泊するため、ソンテウ乗り場で待つ。
この辺りには、超高級ホテルがある。
8400バーツというから、25000円以上である。日本の高級ホテルに似る。
2000バーツ程度のホテルもあるが、約6000円以上である。
日本のビジネスホテルより安いが、現地の感覚にすると、高級ホテルである。
日本人の姿もあり、きっと、その辺りのホテルに宿泊しているのだろう。
旅の目的が違うので、当たり前であるが、国境を流れる河の流れを、部屋から眺めて、ゆったりとしているのであろうと、思える。
さて、私たちは、ソンテウに乗り込み、チェンセーンに向かった。
メコン河沿いにある町である。
向こうに、ラオスが見える。
乗り場に降りて、ゲストハウスの場所に向かった。
小さな町であり、ゲストハウスは、二件のみ。
河沿いの道にある、ゲストハウスである。
出迎えたのは、犬。
誰も客がいないようである。
少し疲れているような、おばさんが出て来た。
ワンルーム、ツーベッドと言うと、部屋に案内した。
一階にある、ゲストハウスの裏側になる。
部屋に入ると、匂いがする。
カビの匂いと、犬の匂いである。
スタッフの野中が、別の部屋も見せてくれという。
すると、ワンベッドルームだという。オッケー。ワンベッドルームは、ダブルベッドである。
別棟に当たる二階の部屋である。
匂いが無い。
ここに決めた。
350バーツである。約千円である。
この辺りでは、高い価格である。
ところが、夜になると、どんどんと客が増えて、ゲストハウスが一杯になった。
寝るためだけに、泊まるという、タイ人が多かった。
中には、白人とタイ人の女性カップルである。
これは、よく見かける。タイでの、擬似恋愛である。女性を一ヶ月キープして、旅を続ける。セックス付き、通訳、お世話である。
荷物を置いて、すぐにシャワーを浴びた。
兎に角、汗だくだったのである。
襦袢も、着物も、汗だくで、すぐに干した。
着物は、汗の形がついて、もう着られない状態である。
絹の襦袢であるが、チェンマイで、洗濯に出すことにした。
しかし、一度、汗を乾かす。
温シャワーであるから、良かった。
トイレも一緒で、ペーパーは無い。大きな水盥がある。
つまり、手動の水洗である。
東南アジアからインドなどでは、左手は、不浄の手とされるのは、尻を洗うからである。しかし、尻を洗って不浄とは、ならない。実に、合理的、エコである。
私は、尻を洗った手のみを、石鹸で洗う。それで、おしまい。
タイパンツに穿き替えて、川沿いのある、マッサージを受けることにした。
川風に、吹かれて、気持ちよさそうである。
180バーツと安い。一時間の、タイマッサージである。
野中と並んで受けたが、マッサージ嬢が、色々と質問してくる。
タイ語と、英語で、話す。
よく解らないことは、笑って済ます。
夕暮れ時である。
そのまま、ソンテウを降りた、場所にある、市場に向かった。
市場に入り、どんな物があるのか、一通り見て回る。
もう、どんな物でも、驚かない。
生きた蛙が、売られていた。
それを、売っていたおばさんの顔が、実に蛙に似ていたから、それに、驚いた。
人間は毎日、見ている物に影響される。
それに、似てくる。
何を見るかということは、自分が何に似るかということ、である。
三本で、20バーツの、茹でとうきびを買った。
そして、道に出て、屋台の麺を食べることにした。
白い太い麺を指差す。
ポークか、チキンかと、訊かれる。
ポークにした。
二人で、30バーツである。約100円。
そのまま、ゲストハウスに戻る。
すると、川沿いに、多くの屋台が出ていた。
実に長い、屋台の列である。
ゲストハウスの隣の寺に入り、一回りする。
小僧の寮がある。
本堂の中に入り、礼拝する。
どこの町に行っても、寺は立派である。
寺の入り口が、拡張するのか、工事が行われている。
タイは、小乗仏教である。
インド、ビルマを経て、仏の教えが伝播した。
ただし、多分にヒンドゥーの教えも、加味されている。
中には、ヒンドゥー教ではないかと思える、寺のあるが、仏教なのである。つまり、ヒンドゥーの神を、守護神として、置いている。
それについて書くのは、別の機会にする。
寺を出て、屋台を見て回る。
もう、部屋に戻れば、明日は、朝バスで、チェンライに行くのであるから、見納めである。
焼きポークを買い、ソムタムという、ハパイヤサラダを買った。
ソムタンは、辛くて美味しい。私には、キムチの感覚である。ハパイヤの歯ごたえがいい。
暫く、歩いて、屋台を見て周り、部屋に戻る。
すると、どの部屋も、人がいる。
驚いた。
一階の部屋は、どこも臭いのである。
到底、ここでは、寝られないという部屋である。
後で気づくが、もう一つのゲストハウスが新築だった。
値段も同じである。
ホテルは、一軒だけで、1200バーツである。
この田舎町では、高い。
もう二度と来ないであろう、街であるから、何とも複雑な心境である。
泊まり逃げである。
裸で、床に座っていた。すると、向かいの部屋に、女性が入って来た。きっと、私の姿を、一瞬でも、見たことだろう。嫌なものを、見たと思ったと、思う。
部屋に入ると、一番に、カーテンを引いた。
ところが、そのカーテン、途中で止まる。彼女は、何度も繰り返しているうちに、カーテンレールを壊してしまった。
私のせいだと、思った。
この裸体を見たくないがゆえに、頑張ってカーテンを引こうとして、壊してしまったのである。しかし、彼女は、根気よく、カーテンを全部閉めることが、出来た。
朝、その彼女に、挨拶すると、英語が出来るかと、訊かれて、イエスと答えたが、彼女が何を言っているのか、解らない。
寝ているスタッフに、なんとかが、こんとかって、何んだと、訊いた。
大きな雲が、何とかという。
大きな雲。
何言ってんの。
スタッフを起こして、彼女と話させた。
要するに、彼女の部屋のトイレに、大きな蜘蛛がいるという。
雲と、蜘蛛の、勘違い。
スタッフが、それなら、先生が得意だと、私を促す。
何で私が、得意なのか。
ゴキブリを手で、潰すことが出来ると、彼女に言ったと、後で聞いた。
結果、水を掛けて、蜘蛛を追い出した。
彼女は、ドイツ人である。一人旅。
実に、危険である。蜘蛛ごときで、キャーと言っていては、旅など、危ない。
これから、タイ南部に向かうというので、地図を持ち出して、色々と説明した。
彼女が行きたいという、南の町は、存在しないのである。
私たちは、サムイ島への、行き方を教えた。
バンコクから、飛行機に乗り、スラー・タニーまで行き、空港前で、バス、船のチケットを買ってしまうのだというと、解ったようである。
ところが、彼女は、美人である。
サムイ島では、イギリス人の女性が、暴行され、殺されている。丁度、私たちが、出掛けていた時である。
観光地化されて、多くの人が集うと、犯罪も多くなる。
しかし、それを、覚悟で、旅をしているのだろう。
今度は、日本にも、来てくださいと、言うが、私の英語が通じない。
スタッフが言い直して、通じた。
二度と逢わない縁もある。
さて、私たちは、地元の人が乗る、バスに乗り、チェンライまで行くことにした。
チェンライからは、VIPバスに乗り換える。
その、地元のバスは、驚くべきバスであった。
一時間半、揺られ揺られて、車酔いという、遠い昔の記憶を思い出したほど。
扉は、開け放して走る。
ローカル線のバスは、面白いが、兎に角、二度と乗りたくないと、思った。
風景も、空気もいいが、あの、振動には、耐えられない。
降りたり、乗ったりする人々。止まる度に、眩暈がした。
そのバスは、二度、警察の検査が、入った。
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