木村天山旅日記

  モンテンルパ

  平成21年9月 

 

第6話

疲れると、食欲が無くなる。

私は、部屋で、ベッドに体を預けて、休んだ。

 

エアコンの涼しさが、心地よい。

少し、うとうとした。

もう少し、あの場所にいて、モンテンルパを味わいたかったと、思った。

いつか、また、訪れたい。

 

昼近くになり、私は、ホテル近くの、地元の食堂に、出掛けた。

何せ、おかずと、ご飯で、50ペソ程度の料金である。100円で、昼ごはんが、食べられるのである。

 

家族総出で、切り盛りしている店である。

おばちゃんがいた。

ハーイと、声を掛けた。

 

にこっと、笑い、手で、椅子を示す。

 

店の前の、おかずの種類が、増えていた。

煮込みハンバーグが、新たに、加わっていた。

私は、それを、注文した。

 

おかずを注文すると、ご飯がついてくる。

 

おばちゃんが、スープはと、聞く。

私は、手を上げて答えた。

 

美味しい。

フィリピン料理というものは、無い。フィリピンは、食べ物が、不味い。

しかし、安食堂のものは、旨いのである。

 

私は、春雨の、おかずも好きだ。

それだけで、済ますこともある。

 

それで、ご飯の量が多い。

時に、ご飯に、スープを掛けて、食べる人もいる。

スープが多いおかずの場合は、皆、そのスープをご飯に掛けるようである。

 

目の前の、若い男は、塩煮の魚で、二人分のご飯を注文して、食べていた。

それでも、ここで、食べられる人は、幸せである。

この店にも、入られない人が、大勢いる。

 

100円の、お金も無い人々である。

 

更に、家も無い。

道端で、寝る。

暑い国だからこそ、出来る生活である。

布団も、いらない。

 

だが、雨が降ると、途端に、涼しくなる。

それは、私には、涼しいが、彼らには、寒く感じられるのだろう。

ジャケットを着ている人もいる。

 

ダンボールを敷いて、寝られる人は、まだ、良い方である。

そのまま、地べたに、寝る人。

止めてある、トラックの、足台に、寝る人もいる。

更には、外に出してある、テーブルの上に寝る人も。

 

路地に入ると、まさに、悲惨である。

 

裸の子供たちが、大勢いる。

そして、裸のまま、寝る。

それは、体が、強くなるというものではない。

着るものが無いゆえに、そうなのである。

特に、幼児は、そうである。

 

食べ終わり、エルミタ教会の前の、公園に行く。

その公園も、路上生活の人が、集う。

 

更に、仕事を得られない人々も、ぼんやりと、過ごしている。

 

そして、物売りである。

私は、一人の、物売りのおじさんと、親しくなった。

 

最初は、私の横で、仕事の準備をしていた。

取り出した、偽の、ブランド物の、財布を私に見せて、700ペソといった。

これは、1000ペソもしますという。

 

だが、欲しいものではない。

 

そこで、色々、彼に質問してみた。

 

家族は

子供が三人います。学校へ行っているのが、二人でねー

一月、どのくらい、売れますか

8000から、一万ペソという。

16000円から、二万円である。

 

それで、やっと、生活が出来るという。

 

ジャパニーズ

そうです

この辺りの女は、3000ペソで、買えますよ

そうですか

日本人の男は、女を買うというのが、当たり前なのだ。

 

歩いている女に、声を掛けて誘ってもいいのである。

 

ここで、いつも、売っているの

いやいや、この辺りを回り歩いて売ります

 

そして、このおじさんと、何度も、顔を合わせた。

私のホテルの前に来ても、品物を広げていた日もある。

 

そんな時に、コーヒーを買って、マイフレンドといって、渡す。

道で会うたびに、挨拶を交わすようになった。

 

いつも、この辺りを歩いているので、また来たら、声を掛けてくださいねと、言われた。