レイテ慰霊 第6話
タクロバン一といわれる、デパートスーパーに出掛けた。
その一階では、ディスカウント商品が並べられている。
子供服の、半額セールのコーナーで、一枚、49ペソの、上着を買った。
男児物、7着と、女児物、3着である。
とりあえず、それで、様子を見に行くことにした。
先ほど歩いた道を、行く。そして、今度は、どんどんと、奥へ向かった。
市場を抜けて、路上の店を抜けて、風景が変わった。
その道を、歩いていて、驚いた。
小学生くらいの、男の子が、タバコを吹かしていた。そして、私の目の前で、捨てて、足で踏みつけて、火を消したのである。
更に、中学生くらいの、男の子が、耳に一本のタバコを挟み、口には、タバコをくわえて、仕事をしていた。
荷物運びのようである。
子供が、大人の顔をしている。
彼らも、ストリートチルドレンであることは、尋ねなくても、解った。
民家がある。
民家といっても、非常に脆い造りである。
暖かい地方だから、それで十分なのだろう。
子供たちは、沢山いた。
まず、四、五人の、男の子たちの、グループである。
しかし、私の持っている物は、彼らには、小さい。
もう少し、歩いた。
二人の男の子を、見つけた。声を掛けた。
シャツは、必要か。ストリーチチルドレンかと。
すると、ストリートチルドレンと、はっきり、言った。
袋から、シャツを取り出した。
すると、周囲からも、子供たちが、集まってきた。
あなたは、ファザー、マザーいると、聞く。
親がいる子は、頷く。
男の子たちに、すべて、配った。すると、一人の子が、女児物も、欲しいという。
これは、ガールと言うと、何やら、説明している。
妹がいるのだろう。それではと、渡した。
十数人が、集った。
写真を撮ってもらう。
大き目の子供が、撮ってくれた。
突然の、私の出現にも、皆、驚いた様子は、ない。
しかし、これは、こんな量では、済まないと、思った。
まだまだ、こういう子たちは、いる。更に、親がいていても、満足な衣服を着る子は、少ない。
皆、その日暮らしなのである。
更に、手を出す子もいる。
食べ物が、欲しいのだ。
お金を、求める子もいたが、お金は、渡せない。
ノーマネーと言った。
そこで、私は、また、道を戻り、今度は、食べ物を買いにスーパーに行った。
だが、その子たちの所に行く前に、必要な子に、渡した。
とても、無理だと、思った。
港の、付近には、多くのストリートチルドレンがいることが、解った。
また、後で、私が慰霊をした、レイテパークの海岸線にも、いることが解った。
そして、一度、ホテルに戻った。
すると、丁度、オーナーが来ていた。
私が、チェックアウトするということで、私に、話し掛けてきた。
要するに、一泊分は、返せないという、話である。
三泊との、予約であり、三泊分の部屋を、あなたのために、用意しているという、内容であると、理解したが、私は、そんなことはないと、言った。
だが、英語が、通じない。
相手の、ペラペラ喋る英語を聞くのみ。
それでも、私は、返すべきだと、言ったが、何度も、同じことを言う。
つまり、返す気がないのである。
それは、それでよいと、思った。喧嘩をするつもりは、ない。
喧嘩をするならば、日本語で、やる。
それ以上に、私は、怒っていたのだと、思う。
部屋の不備を、直すことなく、平然として、客室として、扱うという、神経は、もう、こちらの常識を外れている。
トレイにしろ、シャワーにしろ、壊れているのである。
実に、不便であるが、それを、平然として、ホテルとして、営業しているという、神経である。
喧嘩の相手にならないのである。
つまり、諦めていた。
ただし、私は、オーナーが帰った後で、受付の、おばさんに言った。
ここは、カトリックの国ですね。
カトリックの精神というものは、無いようですね。
私は、部屋に入り、次第に怒りが湧いてきたが、タバコを吹かして、さて、どうするかと、考えた。
と、その時である。
ドアの、あの存在が、見えた。目で、見えたのである。
それは、そのものの、姿ではない。
存在しているということを、示す、見え方である。
これを、説明するのは、難しい。
数人が、重なるようにして、熔けるようにして、立つ姿の、一部である。
それを、見て、感じて、即座に、荷物を整理し、浴衣に着替えて、チェックアウトすることにした。
次のホテルは、決めていたから、早い。
荷物を持って、下に降り、チェックアウトと言って、ホテルを出た。
従業員が、不思議に見つめていた。
ゴーストホテルである。
そして、経営者の、怠慢。すべて、何かが、通じている。
レイテ島独自のものか。
バイクタクシーに乗り、目指すホテルに向かった。
その時の、タクシーのおじさんは、料金を、30ペソと、言った。しかし、それは、嘘である。私は、解らない振りをした。
発音が、サンテと聞こえる。サーティなのである。
私が、わからない顔をしていると、トェンティと言った。それで、オッケーした。
20ペソである。
レイテパークより、近いのであるから、当然、20ペソである。
10ペソは、20円だが、それを、大したことは、無いと、思っていると、この活動は、出来ないのである。
だか、今回の、ホテルの一泊800ペソの、二泊分は、気分が悪かった。
次のホテルは、1100ペソ、2200円で、二泊する。
だが、あのホテルとは、全く違った。
広々とした部屋に、二つのベッドがあり、設備は、整い、疲れもとれて、ゆっくり出来る。
安堵した。
地方の場合は、あまりに安いホテルは、これから、注意しようと、思う。
まあ、あの存在も、あれである。つまり、ああいう存在があるという、ホテルの経営者の意識と、濁りである。
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