木村天山旅日記

  レイテ慰霊

  平成21年9月 

 

レイテ慰霊 第6話

タクロバン一といわれる、デパートスーパーに出掛けた。

その一階では、ディスカウント商品が並べられている。

 

子供服の、半額セールのコーナーで、一枚、49ペソの、上着を買った。

男児物、7着と、女児物、3着である。

とりあえず、それで、様子を見に行くことにした。

 

先ほど歩いた道を、行く。そして、今度は、どんどんと、奥へ向かった。

市場を抜けて、路上の店を抜けて、風景が変わった。

 

その道を、歩いていて、驚いた。

小学生くらいの、男の子が、タバコを吹かしていた。そして、私の目の前で、捨てて、足で踏みつけて、火を消したのである。

 

更に、中学生くらいの、男の子が、耳に一本のタバコを挟み、口には、タバコをくわえて、仕事をしていた。

荷物運びのようである。

 

子供が、大人の顔をしている。

彼らも、ストリートチルドレンであることは、尋ねなくても、解った。

 

民家がある。

民家といっても、非常に脆い造りである。

暖かい地方だから、それで十分なのだろう。

 

子供たちは、沢山いた。

まず、四、五人の、男の子たちの、グループである。

 

しかし、私の持っている物は、彼らには、小さい。

もう少し、歩いた。

 

二人の男の子を、見つけた。声を掛けた。

シャツは、必要か。ストリーチチルドレンかと。

すると、ストリートチルドレンと、はっきり、言った。

袋から、シャツを取り出した。

 

すると、周囲からも、子供たちが、集まってきた。

あなたは、ファザー、マザーいると、聞く。

親がいる子は、頷く。

 

男の子たちに、すべて、配った。すると、一人の子が、女児物も、欲しいという。

これは、ガールと言うと、何やら、説明している。

妹がいるのだろう。それではと、渡した。

 

十数人が、集った。

写真を撮ってもらう。

大き目の子供が、撮ってくれた。

 

突然の、私の出現にも、皆、驚いた様子は、ない。

しかし、これは、こんな量では、済まないと、思った。

まだまだ、こういう子たちは、いる。更に、親がいていても、満足な衣服を着る子は、少ない。

 

皆、その日暮らしなのである。

 

更に、手を出す子もいる。

食べ物が、欲しいのだ。

お金を、求める子もいたが、お金は、渡せない。

ノーマネーと言った。

 

そこで、私は、また、道を戻り、今度は、食べ物を買いにスーパーに行った。

だが、その子たちの所に行く前に、必要な子に、渡した。

 

とても、無理だと、思った。

港の、付近には、多くのストリートチルドレンがいることが、解った。

 

また、後で、私が慰霊をした、レイテパークの海岸線にも、いることが解った。

 

そして、一度、ホテルに戻った。

すると、丁度、オーナーが来ていた。

 

私が、チェックアウトするということで、私に、話し掛けてきた。

要するに、一泊分は、返せないという、話である。

三泊との、予約であり、三泊分の部屋を、あなたのために、用意しているという、内容であると、理解したが、私は、そんなことはないと、言った。

だが、英語が、通じない。

相手の、ペラペラ喋る英語を聞くのみ。

それでも、私は、返すべきだと、言ったが、何度も、同じことを言う。

つまり、返す気がないのである。

 

それは、それでよいと、思った。喧嘩をするつもりは、ない。

喧嘩をするならば、日本語で、やる。

 

それ以上に、私は、怒っていたのだと、思う。

部屋の不備を、直すことなく、平然として、客室として、扱うという、神経は、もう、こちらの常識を外れている。

 

トレイにしろ、シャワーにしろ、壊れているのである。

実に、不便であるが、それを、平然として、ホテルとして、営業しているという、神経である。

 

喧嘩の相手にならないのである。

 

つまり、諦めていた。

 

ただし、私は、オーナーが帰った後で、受付の、おばさんに言った。

ここは、カトリックの国ですね。

カトリックの精神というものは、無いようですね。

 

私は、部屋に入り、次第に怒りが湧いてきたが、タバコを吹かして、さて、どうするかと、考えた。

と、その時である。

 

ドアの、あの存在が、見えた。目で、見えたのである。

それは、そのものの、姿ではない。

存在しているということを、示す、見え方である。

 

これを、説明するのは、難しい。

数人が、重なるようにして、熔けるようにして、立つ姿の、一部である。

 

それを、見て、感じて、即座に、荷物を整理し、浴衣に着替えて、チェックアウトすることにした。

 

次のホテルは、決めていたから、早い。

 

荷物を持って、下に降り、チェックアウトと言って、ホテルを出た。

従業員が、不思議に見つめていた。

 

ゴーストホテルである。

そして、経営者の、怠慢。すべて、何かが、通じている。

レイテ島独自のものか。

 

バイクタクシーに乗り、目指すホテルに向かった。

その時の、タクシーのおじさんは、料金を、30ペソと、言った。しかし、それは、嘘である。私は、解らない振りをした。

発音が、サンテと聞こえる。サーティなのである。

私が、わからない顔をしていると、トェンティと言った。それで、オッケーした。

 

20ペソである。

レイテパークより、近いのであるから、当然、20ペソである。

 

10ペソは、20円だが、それを、大したことは、無いと、思っていると、この活動は、出来ないのである。

 

だか、今回の、ホテルの一泊800ペソの、二泊分は、気分が悪かった。

 

次のホテルは、1100ペソ、2200円で、二泊する。

だが、あのホテルとは、全く違った。

広々とした部屋に、二つのベッドがあり、設備は、整い、疲れもとれて、ゆっくり出来る。

 

安堵した。

地方の場合は、あまりに安いホテルは、これから、注意しようと、思う。

まあ、あの存在も、あれである。つまり、ああいう存在があるという、ホテルの経営者の意識と、濁りである。