木村天山旅日記

  レイテ慰霊

  平成21年9月 

 

レイテ慰霊 第8話

私が通ってきた道に、その小屋があった。

まさか、食堂とは、思わなかった。

 

店の前に、おかずが、並べられている。

三種類だけである。

 

皆に、それを、選ばせた。

私は、春雨のおかずを、選んだ。ライスは、いらないと言った。

 

子供たちは、チキンスープを選んだ。

チキンの足が一つ入り、スープが一杯である。

 

ライスが、山盛り。

その、ライスに、スープを掛けて食べる。

ライスで腹を満たすというようなもの。

 

皆、真剣に食べている。

腹が空いていたのだろう。

 

ジョジョも、私の隣で食べた。彼だけは、一人で、何やら会話する。

17歳の子が、水を取りに立った。

戻ると、ジョジョが、自分のスープを、17歳の子に、上げている。

 

私は、支払いをした。

155ペソ。300円程度である。

兎に角、17歳の子が、私に、何度も礼を言う。

私が、明日帰るというのは、ジョジョしか、知らない。

 

さようなら、と、別れると、他の子供たちは、また、明日という。

スィユー ツゥモロである。

ジョジョは、何もいわないで、バイバイである。

 

私が、外に出る時、ジョジョが、来て、タバコを二本欲しいというので、二本渡した。

バイと、こどもらしくない、言い方である。

 

ストリートチルドレンにも、二種類いて、子供時代を過ごすタイプと、すでに、大人と同じ気持ちで、過ごす子供たちがいる。

 

本当は、子供は、子供時代をしっかりと、過ごして、成長するのが、いい。しかし、ここでは、それが、ままならない場合もある。

 

複雑な気持ちで、ホテルに戻った。

部屋に戻って、少し休んだ。

 

昼の食事は、ホテルの下のレストランで、食べることにする。

もう、どこにも、行きたくないのだ。

今日は、一日、休むと、決めた。

 

そして、マッサージを受けようと思った。

 

ああ、マッサージである。

私は、ホテルの、ドアマンに、尋ねた。

マッサージの店は、近くにあるのかと。

すると、ドアマンは、ホテルの並びの、マッサージ店に、連れて行ってくれた。

 

一時間、500ペソである。

30分後に、来ると、予約して、再度出掛けた。

 

小太りのおばさんが、担当だった。

狭い個室に入り、全裸になり、タオルをかける。

背中から、オイルマッサージである。

 

それから、大変だった。

 

仰向けにされて、タオルを取られる。

そして、言われた、セックスは、3000ペソだと。

 

そのやり取りは、省略するが、おばさんは、500ペソは、店主のもので、私は、セックスをしなければ、収入は無いというのである。

17,18歳の子供が二人いて、学校にやり、生活をするために、これしか、方法が無いというのである。

 

おばさんは、私が断ると、1500ペソまで、ダウンした。

しかし、私は言った。解った。チップを1000ペソ上げます。私は、疲れていて、そのために、マッサージを受けに来た。ですから、最後まで、マッサージをしてください。

 

チップを、1000ペソと、言って、ようやく、おばさんは、納得してくれた。

 

そういうことである。

つまり、搾取されるのである。

貧しい人は、すべて、搾取されている。

 

おばさんが、コンドームを振り回して、私を、説得する様は、滑稽であり、悲しかった。

 

その、やり取りを書いても、吉本の、お笑いになる。

 

しかし、それを書く、気力を失う。

私は、職がなければ、体を売れと、書いたことがあるが、体を売るにも、大変なことである。

 

その姿に、笑いそうになり、そして、泣きそうになった、私である。

生きる、生活するという、厳しさを、私は、改めて、おばさんから、教えられた。

 

下の男の子は、エンジニアを目指して、勉強していると、言う。そして、母親は、それを、支えるために、体を売る。

 

体を売る以外に、方法が、いくらでもあるというのは、見ていないからである。

見なければ、解らない。

聞いてみなければ、解らないこと、だらけである。

 

フィリピンは、島々の国である。

日本も、島国といわれる。

何故、日本は、これほど、豊かになったのか・・・

何故、日本と言う、小さな国が、世界の経済大国と、言われるようになったのか・・・

 

何故、日本が・・・

それを、知るたるめに、世界に、出て、見るべきである、若者は。

必然は無い。偶然も無い。日本は、太陽の国だから、としか、言いようが無い。