木村天山旅日記

  マニラの悲劇・衣服支援

  平成21年9月 

 

マニラの悲劇・衣服支援 第9話

彼女が、部屋から出た後、私は、何となく、急いで、別のホテルに移りたくなった。

本当は、同じ通りにある、ゲストハウスか、元のホテルと、思ったが、一刻も帰国したいと、空港近くまで、出ることにした。

 

そして、バッグ二つを持ち、タイの寝巻き姿で、外に出た。

 

自転車のシクロから、声を掛けられるが、私は、ジプニーで、駅まで行こうと思った。

何台も走るジプニーの、どれ乗ればいいのか分からないが、駅に向かう、一台に乗った。

 

ところで、幾らだったか、忘れた。

向かいの、おじさんに、尋ねた。

7ペソである。14円。

 

ジプニーの運転手に、ステーションと、伝えた。すると、近くの、ステーションの名を言うので、ああ、大丈夫だと、安心。

 

駅付近に来ると、同乗している人が、ステーションと、教えてくれる。

 

荷物をもって、汗だくである。

そのまま、高速鉄道の駅に、登る。

 

そこで、行き先のキップを買う。

ええとーーー

ガイドブックを取り出して、駅名を告げる。

15ペソ。30円。

 

44円で、遠い場所まで、行ける。

言葉が、通じなくても、何とかなり、何とかする。

楽しい。

 

ところが、満席である。

二つの荷物を持った私は、邪魔者であるが、皆、親切である。

 

何せ、バッグと、貴重品を入れた、肩掛けバッグに、日の丸をつけている。

日本人だから、親切ではなく、私の、格好に、親切なのだろう。

タイの、パジャマ姿である。

 

途中で、おじさんが、席を譲ってくれるという、行幸。

 

そして、最終駅に、到着。

昼前である。

そこで、駅ビルの、アメリカンスタイルの、店に入る。

 

その前に、トイレ。

荷物を、店内に置いて、トイレを探す。

 

解らない。

ガードマンに聞く。

トイレの前では、ボーイが、お金を取る。

2ペソ。4円。

 

戻って、注文の列に並ぶ。

すると、注文を聞くボーイが来る。

先に、注文して、その紙を出すのだ。

 

えーと、あの、と、写真を指差し、二番だから、ツーと、アイスティーね

オッケーと言い、紙を渡される。

 

それを、持って、順番が来て、差し出す。

スパゲティと、ハンバーグのセットで、70ペソで、アイスティーが、15ペソ。85ペソ。

100ペソを出す。

 

お釣りを貰って、トレーに出された、物を持って、席に着く。

 

日本では、決して食べない、餌のような、ハンバーグと、スパゲティである。

一口目は、美味しい。二口目から、不味い。

 

食べ終わり、アイスティーを飲みつつ、地図を思い出す。

目指すは、ホテル・アパート、つまり、ゲストハウスである。

 

前回も、ここには、来ている。

バザー、マーケットは、混雑していて、酷い状態の場所。

そこを、抜けて、勘で、歩く。

近道のつもりで、中小路に入る。

 

それで、勘違いして、逆に歩いていることに、気づかない。

そして、大きな通りに出た。

 

ゲストハウスを、探しつつ、歩く。目指すアパートはない。しかし、一つ見つけた。

 

何とかIN and レストランという、看板である。

広い、玄関に入ってみると、ボーイが、飛んで来た。

ようこそ、と、言うように聞こえる。

 

スティ、オッケーと、聞く。尋ねているつもりである。

オッケー

ボーイが、快く、案内する。

 

敷地内の入ると、更に広い。真ん中に、何と厨房がある。

不思議な、ゲストハウスである。

勿論、地図には、載っていない。

 

二階の部屋に通される。

すると、一人のおじさんが、やって来て、料金の説明をする。

兎に角、理解したのは、一泊、1170ペソであること。

 

ここは、長期滞在型のホテルのようである。

三泊しても、同じ料金で、更に、延泊すると、安くなる。

不思議だ。

 

ボーイが、エアコンをつけ、テレビをつけて、部屋の中を説明する。

よく解らないが、頷く。

その、ボーイが、実に、可愛らしい。

真剣に説明しているのが、おかしくなる。

 

そして、私は、説明を終えたボーイに、言った。

ユー、グッド、ボーイ、アフター、カムイン、マイルーム

イッツ、プレイと。

後で、自分が、言ったことを、反芻して、実に、おかしなことを、言ったと、思った。

あんたは、いいボーイ、私の部屋に来て、プレイしよう。つまり、それは、セックスしようという意味になると・・・

 

通りで、ボーイが、顔を赤らめて、もじもじして、あのー、仕事中ですから・・・

と言った、ように、思う。

 

しかし、彼は、実に、親切にしてくれた。

 

更に、驚きは、部屋の鍵をくれないのである。

どういうことか。

何度か、鍵は、と、問うが、なんとかこんとか、で、一階のなんとかと、言われる。

 

つまり、このホテルは、アメリカ式のモーテルであり、ゲストハウスであり、ラブホテルでもあるのだ。

 

すべて、一階の、フロントで、管理している。

どこの部屋に誰がいて、今は、部屋にいる、外に出たと、見ているのである。

 

買い物に出掛けた時も、部屋に鍵をかけないで、いいのである。

サービスも、実によい。

レストランというだけあり、夜の食事を食べたが、美味い。

 

食事は、すべて、部屋でする。

レストランという場所は、無い。

 

更に、驚きは、空港までの、タクシーが無料なのである。

タクシー運転手に、言われた。

あのホテルは、サービス満点さと。

 

そして、タクシー運転手には、サービスタクシーだから、チップをと言われて、100ペソ出すと、もう一枚と言われ、200ペソ上げた。

メータタクシーに乗れば、200ペソ以内で、行けるはず。

それなら、サービスにならないと、思ったが、仕方ない。

 

そして、ようやく、帰国である。