みたび日々徒然 58

木村天山    

 私のコンサートは、いつも満席、またお客様を帰してしまうほど人が来るというアホな音楽家がいる。

 話をよく聞くと、なんのことはない無料で客を入れているのである。市や区が主催する住民サービスの一環として開催しているコンサートである。そして、そのギャラ、お礼はと言うと、交通費程度の金額である。恐れ入る。

 こういう輩が、相場を壊すのである。

 市や区も、良いことをしていると勘違いしている。市民や区民に、音楽を聞かせて心豊かにとか、何とか言ってである。誰が、その良いことの犠牲になっているのかというと、音楽家である。また五千円から一万円のギャラを貰い、無料でコンサートをするということに、何の疑問も持たないところが、アホなところである。

 そうして、自分たちの首を絞めているのである。結局、いつまで経っても、良い状態にならない。

 音楽で食べてゆく者は、死活問題である。公務員は、そんなことは、どうでもいいだ。音楽家を育てるなんという、粋なことは考えられない。予算が無いので、という言葉で通ると思っている。自腹を切って開催することは、勿論無いだろう。いい気なものである。 私は言う。両者共に、芸術を見くびっている。自分たちの首を絞めて、私のコンサートは、いつも満席だと言うアホは、救われないし救いようがない。

 ただは、ただなのである。ただで人が満席でも、誇れることではない。

 また客も、どうして、お金を払っても聴こうとしないのか、それも不思議である。ただのものは、所詮ただなのであるということを知らない。

 無形の芸術にお金を出すというところが、肝腎要の問題なのである。

 この話をすると、長くなるので、止める。

 相場壊しをするアホは、配偶者や親がいて、生活に困らない状態であるから、危機意識がない。いつも満席だから、自分の芸が良いと信じているアホである。

 クラシックの世界には、こういうアホが数多くいる。

 一般的常識も無いアホが多いのも特徴である。勘違い、見当違い、心得違い等々、アホ馬鹿の集いである。

 

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