第5話
モンテンルパから戻り、ホテルに着いたのは、本当の出発の、11時前である。
運転手にお金も渡し、部屋で、ホッとしていると、ドアがノックされた。
ガイドの、女性である。
男も、一緒である。
あれっ
今、モンテンルパから戻ったんだよ
えっ、どういうこと。出発は、11時でしょう
私は、運転手から、貰った、電話番号を出して、この人が、行ってくれたよと、言った。
女性は、知らないと言う。
今度は、私が、どういうこと、と、言った。どうして、あの人は、今日の予定を知っているの
私、言ってない
しかし
あの時、誰かが、この話を聞いていたよねと、連れの男に女が言う。
男が、私が、差し出した、電話番号に、電話する。
そして、しばらく、話し合いが、続いた。
女性は、涙を流した。
どうして・・・
私は、再度、どうして、あの人は、この予定を知っていたのかと、女に、問うた。
しかし、女は、解らないと言う。
要するに、私を連れた男は、仕事を横取りしたのである。
私は、二人に、言った。
このことは、私と、関係ないことだ。あなたたちで、処理して欲しいと。
女は、頷いた。
そして、悄然として、部屋を出て行った。
私は、女に、もう、今日は、これでいいから、一緒に過ごさなくていいと、言った。
彼女に、損は無い。
お金は、払っている。
セックス無しの、とても、良い条件の仕事だった。
更に、彼女は、自分と、同じ店で働く女たちの、子供の衣服を、優先して、私の支援物資から、頂くことが、できたのである。
あの、運転手は、言った。
あの店は、三流の女たちが、いる。皆、子持ちの女だ。
そして、女の取り分は、三割だと、言った。つまり、私が、払った、2000ペソの、三割、600ペソ、1200円が、取り分なのだ。
その次の、二流は、3000ペソ、その上が、4000,5000ペソとなる。
上になると、若くて、美しい女たちである。
それでも、取り分は、三割である。
フィリピンは、売春禁止である。しかし、それを、厳格に規制すると、多くの人は、路頭に迷う。ゆえに、合法的処置が、取られている。
実際、日本人をはじめ、韓国、中国人が、女を買うために、マニラに来るのである。
女は、部屋を出る時、寂しそうに、私に、手を振った。
私も、これで、彼女との、関係は、終わりである。
運転手の男は、折角買ったんだから、セックスしなよと、言った。
だが、私に、それだけの、気力は無い。
慰霊と、支援で、どれほど、疲労するか。
疲れマラという言葉がある。
疲れると、ペニスが、立つというものである。
確かに、疲れマラという、状態は、あるが、実際に、単独で、慰霊と、支援のことをする身には、疲れマラどころではない、疲れがある。
マニラで、支援活動をするということは、地獄に、身を入れるということと、同じである。
兎に角、私は、それで、彼女との関係を、終わった。
そして、それで、良かった。
私に必要なのは、女ではなく、男の協力者である。
支援物資を運ぶのも、力である。
実は、トンド地区に、支援に出掛けた時、彼女が、ガイド役をしたが、役立たずであった。
タクシー運転手が、見かねて、助けてくれたほどである。
これは、後で、書くことにする。
あなたは、いい人と、女は、言った。
確かに、セックスをせず、彼女は、実に、楽に、二日分の、売り上げを得たのである。
勿論、それでも、足りない。
そこで、お客に、たかる。
日本人なら、たかると、まあまあと、金を出すのである。
さて、こうして、モンテンルパの追悼慰霊の儀は、終わった。
最後に、ホテルの、ドアマンである、おじさんが、私に、タクシー代金は、幾らだったと、尋ねた。
2500ペソと言うと、頷いた。
私は、オッケーかと、聞いた。
おじさんは、オッケーと、言った。
つまり、ボラれた訳ではなかった。
ホテルの従業員は、私の行動、活動を理解していた。
とても、親切に、そして、心配してくれていたのである。
レイテ島に出掛ける時も、間違いないタクシーを捕まえて、国内線の、セブ航空だと、伝えてくれた。
要するに、人の心の通う付き合いなのだ。
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