木村天山旅日記

 

アボリジニへの旅
平成20年7月 

 

第1話

ケアンズから、夜八時に帰国した。

すでに、私の目は、紫外線により、日焼けしていた。肌ではない。目が、日焼けしたのだ。

 

目の疲れは、体全体の疲れになる。

兎に角、目は、心の窓だけではない。体の窓でもある。

 

横浜まで、バスに乗った。

夜の闇が、目に心地よい。

 

この旅の最初の、三日間は、ケアンズで、過ごした。

その時は、後悔した。

新興都市ケアンズは、アホ面である。街が、アホ面なのである。

更に、物価の高さである。

 

サイパンの旅も、そうだが、観光地とされる土地や、国に行く趣味はない。

ケアンズという、街にも、興味がなかった。

しかし、飛行機の、乗り継ぎのために、滞在することになった。

カンタス航空の、特別チケットが、手に入り、そのため、アーネムランドの、ゴーブという街に向かう飛行機の、乗り継ぎのためである。

 

バリ島から、ダーウィンへ、そして、ゴーブという方法もあるが、値段が高いのである。

 

バリ島に、滞在している間に、ダーウィンに行き、そこから、ゴーブに入ることを、次からは、考えている。

 

ゴーブという街は、アーネムランドの東側海岸に当たる。

アーネムランドとは、アボリジニを象徴する土地である。

北海道と、四国を合わせた大きさである。

オーストラリアの東北に当たる。

ちなみに、オーストラリアは、日本の、21倍の広さである。日本の、真南に当たる位置にある。現在の人口は、2000万程度で、人口の大半は、東海岸に集中する。

 

さて、ケアンズである。

私は、好きも嫌いもなく、そのままを、書くことにする。

 

兎に角、物価が高く、嫌になるほどである。

朝の六時過ぎに、ケアンズに到着して、安いゲストハウス、あちらでは、モーテルというが、それを、探すのに、一苦労であった。

エアポートバスには、私たちの二人だけである。

街中に、降ろされて、宿探しである。

 

ホテルは、日本と変わらない料金であるから、最初から、諦めていた。

案内書を見て、モーテルを回る。

街中の、モーテルは、満杯である。

 

朝のコーヒーと、サンドイッチを食べて、二千円以上に、最初、驚いた。

野中が、近くのモーテルに、出向いたが、十時にならないと、解らないと言われた。

それから、タクシーに乗り、街の近郊のモーテルに向かった。

矢張り、満杯である。

再度、タクシーに乗り、駅付近のモーテルに向かった。

タクシーは、千円以上である。日本なら、ワンメーターであろう、距離である。

 

結局、野中が、最初に出掛けたモーテルの、長期滞在用の、コンドミニアムのような、一泊、約六千五百円の部屋に決めた。

私たちには、とても、高い部屋である。

タイで、泊まるにしても、二千円前後のホテルか、ゲストハウスなら、千円程度からあり、それに比べると、実に、高いのである。

 

勿論、それを、予想して、日本円を、持っていったが、信じられないほど、お金がかかった。

 

私は、毎日、スーパーに買い物に出掛けた。二食は、部屋で、食べるつもりだった。

 

和食の店で、安い定食を食べても、二千円である。

たぬき蕎麦が、千二百円。

 

沢山お金を持っての、観光旅行ではない。

追悼慰霊の旅である。そして、子供服支援である。

 

美味しくて、安い、日本米の、おにぎり屋さんを、見つけて、ホント、良かった。

一個、120円程度である。

丁度、オーストラリアドルが、高くなっている時期であり、想像以上の、出費であった。

 

ケアンズの街で、感じたことは、仕事をしている人の多くは、日本人、韓国人、中国人である。

勿論、オーストラリアの人もいるだろうが、私の見たところは、大半が、アジア系である。

 

また、観光客も、日本人、韓国人が多かった。

タクシー運転手は、働く人も、観光客も、日本人が少なくなったと言う。ということは、以前は、もっと、日本人がいたということである。

 

あの、新興の街に来て、一体何をするのであろかとの、疑問が、湧いた。

旅行案内を見ると、ダイビングや、世界遺産を見るというものがあり、確かに、観光地としての、目玉はある。

 

実は、私は、ケアンズの、アボリジニの文化を紹介する、ジャプカイ・アボリジナル・カルチュラパークには、出掛けようと、思っていたが、止めた。

理由は、オーストラリアの、アボリジニ政策を、知ったからである。

 

ケアンズの三日間は、アボリジニの理解に、当てた。

これから、追々と書くが、凄まじい、独善の侵略と、同化政策である。

 

その、パークで、見られるものは、オーストラリアが、勝手に解釈した、アボリジニの文化だと、気付き、そんなものを、見ても、単なる、お昇り観光客と、同じであると、気付いた。

それより、早く、アーネムランドに行くことだと、思った。

 

ケアンズの季節は、冬である。

ところが、朝晩は、少し冷えるが、日本の初夏を思わせる、気候である。

何とも、気持ちがよい。

 

ただし、日差しは、体に毒であるから、注意だった。

紫外線が、日本の七倍である。

サングラスと、日焼け止めが、必要だ。

私は、浴衣を着て過ごしていたので、サングラスをかけた。といっても、いつものメガネに、乗せるものである。

しかし、それを、時に忘れる。

 

目が、日焼けするという、感覚になるのである。

 

スーパーに行き、インターネットカフェに行き、部屋で、アボリジニについての、本を読む。特に、今回は、日本人女性の、学者の本が、有意義だった。

 

私は、旅の間、本を読む趣味はない。

本など、読んでいられないのが、旅であるが、サイパンの時も、追悼慰霊以外の時は、本を読んだ。それほど、何も興味が、持てなかったのである。

 

そして、マッサージである。

旅の、唯一の楽しみは、マッサージである。

しかし、料金が高い。

最初に、出掛けたマッサージは、何と日本人経営の店である。

フットマッサージ、30分、30ドル、約三千円である。

 

それから、安いマッサージを探した。

ナイトマーケットの中にある、韓国人の若者が多く働く、マッサージ店を、見つけた。

10分単位である。千円。

しかし、組み合わせると、安くなる。

フットと、全身45分で、25ドル。

 

片言の英語で、話すと、経営者は、中国人だと、言う。

ワーキングビザで、働きに来ているという。

そこに、二度行った。

後は、高くて駄目。

 

和食の店も、一度行ったきりである。回転寿司もあるが、入らなかった。

シーフードを食べたいと思ったが、レストランの料金が、また、高い。

店の前で、客引きをしていた、日本人女性に、この値段高いねーと、言うと、ハーフにして、注文することも、出来ると、言われた。

後で来ると、言ったが、結局行かずに、ナイトマーケットの、屋台の料理を買い、部屋で、食べた。

それは、皿の大きさで、値段が決まるというもの。好きな皿の大きさを選び、それに、料理を、好きなだけ乗せるというもの。詰め放題のような感覚である。

私は、11ドル程度の皿を選んだ。中間の大きさである。

 

しかし、それなのに、私は、食べ過ぎていた。

スーパーで、買う物、多く買うと、一つについて、安いので、多く買う。

すると、捨てるのがもったいないので、食べる。

そうして、食べ過ぎになったのである。