天山旅日記
ベトムへ
平成20
10月
 

第9話

ここで、一度、ベトナムから、離れることにする。

 

ホーチミンでは、三泊した。その後、私たちは、バンコクに向かった。

ボッタクリのタクシーではない、正規の運賃を支払う、タクシー乗り場が、ホテルの並びにあった。

 

8ドルが、相場だと知っていたので、前日、予約をして、確認した。

確かに、空港までは、8ドルである。

そこには、運転手ではない、何の役目なのか、必ず、受付の者がいた。特に、事務所がある訳ではない。

 

もしかしたら、政府関係の、旅行者向け担当の、職員かもしれないと、思った。

その人に、8ドルを支払うと、それで、オッケーである。

 

バンコクまでは、一時間半の飛行機の旅であるが、出国手続きが必要だ。

 

私たちは、ホテルを九時過ぎに出た。

丁度、車や、バイクの込み合う時間帯を、空港に向かった。

海外では、兎に角、早め早めに、行動するようにしている。何が起こるか、解らない。

 

比較的スムーズに車は、進んだ。といっても、大変な道路事情である。

カーレースのような、運転に、感心して、乗っていた。

 

一時の飛行機であるから、11時までに行けばよい。

しかし、車は、10時前に到着した。

 

次の時は、路線バスを利用しようと、思っている。何せ、3000ドンである。

15000ドンが、一ドルであるから、25セントということになる。

また、路線バス乗り場も、知ったので、それで空港まで行くことにする。

 

ホーチミンの、タンソンニャット空港は、こじんまりとしている。日本の地方の、空港のようである。

 

まだ、登場手続きが始まっていないので、空港内の、唯一の、オープンカフェに入り、コーヒーを頼む。

何と、8ドルである。

とんでもない、料金で、驚いた。

 

しかし、空港は、どこも値段が高い。

私は、どうどうと、買い置きの、果物などを、取り出して、そこで食べることにした。そうそう、ヨーグルトも、あった。

 

私の旅の楽しみは、地元のスーパーや、商店で、買い物をすることである。

時に、それらを、すべて食べられないで、日本に持ち帰ることもある。

しかし、それは、違法である。

果物などの、生ものは、持ち込み禁止。

 

トイレに立ちつつ、ボードを見て、手続き開始を、待つ。

二度目のトイレの時に、手続き開始の、点滅である。

 

ベトナム航空の、チェックインカウンターに向かう。

混雑していないのが、いい。

待つことなく、スムーズに手続きが進み、そのまま、出国手続きに向かう。

 

そこで、また、あの、ブーである。

荷物をベルトに乗せて、門をくぐる時に、ブーと鳴る。

面倒だが、着物の袖の物を、すべて出す。

しかし、腹を指摘された。

これは、脂肪だと、言いたかったが、言葉が解らない。

 

担当の女が、帯を取れと指示する。また、ここで、裸になるのか。

グアムの空港で、パンツ一貫になったことを、思い出した。

ここは、穏便に、穏便にと、静かに、帯を解く。

 

同行の野中が、ライターを袖に入れるから、ブーと鳴るのだと言う。

最初から、ライターを取り出して、籠に入れるべきだと、言う。

解った、解った。

 

私の場合は、声が大きいので、相手を威圧するらしいのである。

最初に、大声を出すと、相手は、怯む。

しかし、生来のもの。どうしようもない。

だが、兎に角、穏便を心がける。

 

驚いたとこは、出発ロビーには、日本人が多い。

皆、ホーチミンを通り、バンコクに向かう人なのである。

そして、韓国人である。

 

喫煙室に入ると、日本語と、韓国語が、耳に入る。

飛行機に乗り込むまで、一時間半を、私は、喫煙室に出たり入ったりを、繰り返した。

 

喫煙室というのは、実に、面白いのである。

密室で、多くの人が、タバコを吸う。そして、それぞれの会話である。

聞くともなく、聞いていると、しょうもないことを、話していたりする。

 

フリーツアーで、旅行している人もいるようで、何となく浮かない顔をしていたりする。

ただ、旅の疲れのみで、旅の楽しみを感じていないようである。

中年のおじさんが、一人旅なのであろう。バンコクの旅行案内を、真剣に見ている。

カップルは、倦怠感に溢れている。

旅の間は、セックス三昧で、それだけで、疲れるのだろう。

 

韓国人の、おじさんたちは、元気である。

缶ビールを飲みつつ、タバコを吸い、大きな声で、談笑している。

 

若者の、一人旅の姿を、あまり見なくなった。

それより、三十代の男の姿が、目立つ。

バンコクで、どこの売春宿にするかと、思案している風情である。

 

日本で出来ない遊びを、思う存分、バンコクで晴らす、そんな雰囲気。

と、それを、想像する私の、想像力も、貧弱である。

 

だが、証拠は、ある。

後で、バンコクの、スクンビット地区に、行くが、そこで、立つ、売春の女、レディーボーイから話を聞くと。日本のサラリーマンの、お客が多いという。

少しの時間しかない。その少しの時間を、立ちんぼの、女と、また、レディーボーイと、過ごすというのである。

 

彼女たちは、売春宿より、断然安い。

一時間の、ショートだと、1000バーツである。約、3300円。

二時間で、2000バーツ。約6600円。

女好きでも、レディーボーイを買う日本人が多いと、聞いて、驚く。

 

レディーボーイ曰く、だって、私たち、男なの体、知り尽くしているのよ。

そりゃあ、そうだ。元は、男である。

 

さて、いよいよ、飛行機に乗り込む。

客が、意外に少ない。これは、寝られると、思った。

 

日本と違い、すべてのお客が機内に入ると、出発である。

時間通りではない。

さっさと、飛び立つ。

私は、それが、気に入っている。もたもたするのは、嫌いだ。

はい、全員乗りました。よし、行くぞ。

そして、動き出す。

 

カンボジアの上を飛んでいる、と、私は、窓から、下の風景を見下ろす。

近いうちに、カンボジアにも行く。

王国であるから、いい。王様のいる国には、親近感が、持てる。

 

カンボジアは、ポル・ポトによって、知的階級が、皆殺しにされて、一番必要なことは、教育である。

勿論、貧しさは、また、格別であろう。

日本のボランティア団体も、多く活動している。

特に、学校建設である。

 

一時間半の、飛行時間であるから、忙しい。

お絞りが、出て、飲み物があり、食事である。

 

オチオチ、寝てられない。

三席に体を、横たえていると、乗務員に起こされる。

飲み物は、何。

えーと、オレンジジュース。

ビールや、ワインもある。

しかし、私は、飛行機の中で、アルコールを、飲みたいとは思わない。

 

食事が終わり、横になっていると、着陸の準備です、という、アナウンスが流れる。

と、聞える。ベトナム語であるから、解らないが、機体が、激しく揺れるので、下降しているのだろう。

 

落ちることなく、バンコク、スワナプーム空港に、到着である。

 

あー、懐かしい。

私は、この空港が、大好きである。

なんか、自分の物のように、思えるのである。ホント、お目出度い。

 

入国、そして、荷物を受け取り、市内へ出る。

 

ここからである。

今までの方法を、止めた。

そのまま、外に出ると、タクシー乗り場がある。そこには、決められたタクシー乗車の場所と共に、個別にタクシーを売り込む人たちで、ごった返している。

私は、あえて、そこを避けて、出発ロビーに上がり、そこから、外に出る。

 

そこには、客を乗せて、到着したタクシーがいる。

そのタクシーを捕まえるのである。

戻りの、客がいるというのは、彼らにとっては、実に得である。

そこでは、こちらの言い分が通る。

 

空港から、直接、パタヤに向かう。

1500バーツで、交渉した。だいたい、それくらいで、まずまずである。

普通の車で、タクシーではなかった。

安いと、1300バーツでも行く。

何でも、相場というものがある。

あまり、叩いても、気分が悪いことになる。

 

約4500円である。

パタヤまでは、一時間ほどかかる。

高速道路も含めての値段であるから、納得。

 

パタヤのことを、説明しつつ、旅を進めてゆく。