天山旅日記
ベトムへ
平成20
10月
 

第18話

朝、九時半を過ぎたので、早めに空港へ向かうことにする。

一時間半の飛行時間でも、出国するのである。

二時間前までに、行くこと。

更に、何があるか解らないので、早めに向かう。

 

タクシーの交渉である。

小西さんから、タクシー運転手が、本当にキレると、必ず殺すという話を聞いた。

車内に、銃を隠し置いているという。

 

あらあら、それでは、喧嘩は出来ない。残念。

ということで、タクシーを捕まえて、合掌して、サワディーカップと、笑顔で、近づき、英語で、スワナプーム、エアポートターミナルと言って見た。

ハウマッチ。

400バーツである。いいじゃない。500バーツと、言われるかと思った。

勿論、高速料金すべて、含めてである。

 

一度、カオサンから乗り込んだタクシーは、500バーツで、すべて含むと言ったが、高速料金のたびに、請求し、更に、チップまで、要求してきた者もいる。

また、逆に、突然、捕まえた、タクシーは、300バーツで、高速を通らず、猛スピードで、走った若者がいた。

スタッフ曰く。きっと、暴走族だったんだ、と。

 

今回の運転手さんとは、和やかに過ごした。ゆったりとした、タイ語で語り掛ける。そして、今度来る時は、呼んで下さいと、名刺を渡された。

 

実は、今回の旅は、細かなところで、色々と、人の心の機微に触れ、更に、旅が楽しいものになっていた。

こういう、言い方をする。何かに、守られているようである。

 

怒り心頭ということが、無いのである。

ベトナムの一件を別にしては。

 

早めについてみると、まだ、受付が、始まっていない。

私は、このスワナプーム空港が、大好きである。

一階に下りる。

大食堂に行く。

旅行客もいるが、矢張り、職員が多い。

 

入り口で、100バーツ分のチケットを買う。余ると、現金に戻してくれる。

いたいた、私たち二人は、無愛想な女がいることを、確認。

混雑時は、三人の女が、チケット販売にいる。

その女は、真ん中にいた。

スタッフは、その女が嫌いである。あまりの、無愛想にである。

 

ニコリともしない。

お金を、受け取ると、投げつけるように、チケットを出す。

とっとと、行けという、雰囲気。

しかし、私は、それが、楽しい。

真ん中の女に、お金を出すように、右の女に、差し出した。

どうだ。

 

こんなことで、意気がっても、しょうがない。

ところが、楽しいのである。

 

さて、チャーハンを頼む。

安くて、大盛りである。側にある、野菜は、取り放題である。

野中が、それを大量に取る。自分は、食べないので、野菜だけにするつもりだ。

そして、私は、チキンが食べたくて、チキンを指差した。

店員は、笑顔で、チキンを目の前で、パンパンと、切ってくれる。と、更に、ご飯も、盛り付けた。アッ、それは、いらない。と、思っても、言葉が出ない。

一人前が、出て来た。スープもついた。

 

これは、食べ切れない分量である。

 

全部で、80バーツ。約270円。

 

頑張って食べた。一生懸命に、食べた。

 

野中は、バリバリと、生野菜を食べている。

 

食べ終えて、残りのチケットを、返金してもらう。

最初から、現金にすれば、いいのにと、いつも、思う。

 

搭乗手続き開始の、表示が、点滅している。

四階まで、エレベーターで、上がる。

ベトナム航空に進む。

 

支援物資が、無いので、実に、楽チンである。

出国手続きも、問題無し。

 

必ず、立ち寄る、アイスクリームを食べる店に寄る。

腹一杯だが、アイスクリームを注文する。

 

その時、ワンカップで、150バーツで、ツーカップで、300バーツである。

しかし、二つ分の、分量のカップでは、270バーツである。ということは、それを、注文し、それぞれ、一つを食べると、30バーツが、浮くことに、気づいた。

しかし、注文した後である。

次に来た時に、そうしょうと、話し合った。

話し合うようなことではないが、30バーツ得するということが、大問題なのである。

 

ところが、私は、立ち上がって、二つ頼んだでしょう。

これは、270バーツだから、二つで、270バーツは、駄目と、日本語で、言った。意味が通じたらしく、女は、憮然として、300バーツと、言う。

 

ああー

駄目、か。

食べていると、別の女の子が、笑顔で、私に挨拶する。

そうだ、二リットルのペットボトルに手をつけていない。次の手荷物検査では、水は、持って入れないと、彼女に、渡す。

コープクンカー。

もう、帰るの、またね。

日本語である。

しかし、意味が通じる。

 

その子に、手を振り、手荷物検査に進む。

アメリカの飛行機は、次も、検査がある。搭乗待合室に入る前である。

また、検査―――

テロが、本当に、怖いのである。

 

ベトナム航空は、国際線であるから、食事が出ることを、忘れていた。

あらら、また、食べることに。

 

まだ、時間があるので、別の待合室の、喫煙室に行く。

勝手知ったる、のである。

誰もいないはずが、職員が、たむろして、タバコをふかしていた。

皆、若い男たちである。

 

一人の、より、若い男に声を掛けた。

どこから、来たの。要するに、タイのどこの出身と、尋く。

ところが、英語が駄目である。

 

自分も、英語が出来ないのに、英語が話せるかと、尋く、私。

少しだけ。

 

それでは、あなたは、男が好きか、女が好きか。

これも、駄目。

野中に通訳を頼む。

しかし、ね。最初に、そんなこと、尋く、の。

いいから、尋いて。

 

女が好きだって。

残念。私の好みなのに。

野中が、愕然として、通訳しない。

 

彼は、ターミナルの、警備である。

しかし、そのように、見えない服装をしている。

きっと、エージェントなのだろう。でも、エージェントっていう、意味が、解らない。

 

特別警備役で、スーツで、警備をしているのであろう。

アラッ、普通の客も、入って来た。私のような人がいるのである。

 

広くて、大きい、スワナプーム国際空港は、私の好きな場所である。

この、スワナプームという言葉を、覚えるのに、実に時間がかかったのであるが。