木村山旅
 沖縄・渡嘉敷島へ
 
平成20年
 12月
 

 第2話

ステーキは、目の前で、焼いてくれる。

何と、可愛い少年がついた。

 

いくつ

18です。

どのくらい、してるの

一年です

 

コースであるから、最初は、野菜を炒める。

その前に、ウェイトレスが、スープを運んできた。

しかし、私は、ビールを飲んでいるので、スープは、すぐに飲めない。

 

冷めないうちに、召し上がってくださいと、少年は言う。

 

それから、私は、少年に、根掘り葉掘りと、質問した。

家族と一緒に暮らしている。

給料は、とても、安い。いずれ、本州の大学に行きたい。

 

何を勉強したいの

えーと、まだ、そのー

何か資格取りたいの

ええ、出来れば

 

沖縄って、仕事ないの

そんなことはないです。やろうと思えば、色々あります

この、質問は、色々な人に訊いてみた。

 

今時期は、観光客が少なく、暇だそうである。

 

どちらからですか

横浜

行ってみたい

東京に近いよ

 

少年は、ジャニーズ系というのだろうか、そんな見た目である。

 

何やら、手品のような、手さばきで、塩と胡椒の、入れ物を、振る。

 

へー凄いね。どのくらいで、覚えるの

三ヶ月です

 

肉を焼く。

 

好みは、どの程度ですか

君が、美味しいと、思う程度で。味見するでしょう

はい、時々、食べてみます

 

でも、と、少年は、言いにくそうに言う。

お客さんによって、違いますから

そうだよね

酷い人になると、焼いた肉を、スープに入れろと言うんです

えー

食べたくないんでしょうね

 

要するに、焼き加減が、気にいらないのでの、皮肉なのだ。

 

観光ですか、お仕事ですか

慰霊に来たの

えっ

渡嘉敷島にね

はい

 

少年は、そこで、無口になった。

そんな客は、いなかったのだろう。

 

気分を変えて、私は

ガールフレンドは

いません。少し前に、それらしき相手いたんですが・・・

 

肉は、非常に美味しかった。

 

この肉は、どこの

メキシコです

へーえ、メキシコ

はい

美味しいね

ありがとうございます

丁度、いいよ

はい、ありがとうございます

 

更に、地元の野菜を焼く。その、野菜の名を訊くのを忘れた。

青梗菜に似たものである。

その時、また、少年は、手品のようなことをした。

ナイフを二本で、何やら、踊るようなものである。

私一人のために、である。拍手しては、おかしいと、黙ってみていた。

 

凄いねー

いえ、まだまだ

 

すべてが、終わると、頭を下げて

ごゆっくりして下さい

と言い、下がっていった。

その後を見ると、店長なのか、時計を見て、彼に、オッケーを出していた。

 

少年は、肩を叩かれて、頷いていた。

 

私は、肉と、野菜と、ご飯を食べ、サラダを食べて、終わった。

 

支払いをして、国際通りを歩いた。

ついでに、母のお土産に、黒糖を捜した。そして、商店街の中に入った。

それは、すぐに、見つかった。一キロの塊を買った。

そして、もう一つは、塩である。

沖縄の塩を捜した。

 

塩の置き場の、袋を一つ一つ見ていた。

店員が、色々と説明する。

今ねー、本当か、嘘か、解らないでしょう

はい、そうですね

沖縄の塩が、欲しいの

はい

 

三袋を選んだ、

そして、店員に渡す、と、一人の店員が、一つの袋を取り上げて、

これは、オーストラリアの塩を、こちらの海水に溶かして、作ったものです

と、言う。

あっそう

駄目ですね

と、店員が言う。

そうだね

すると、それを、はじいて、二つだけ、包んだ。

 

通りの中に進んでゆくと、沖縄衣装のようなものが、1200円である。

それを、手に取る。

それは、新しいものです

民族衣装ですか

うーん、というより、新しい舞台衣装に使ったりします

そう

普段は、もう、着物は、着ませんから。これを、色々アレンジして、沖縄風にします

 

私が着たら、照る照る坊主になると、思った。

ムームーとでもいうのか。

安いので、一着買った。

 

そして、また中に進んでいくと、道が、四方にある。さて、どうするか。私の癖である。どんどんと、入って行きたくなる。海外では、危険だといわれる行為であるが、ここは、日本である。

入り組んだ道は、面白い。

どこに、どうなっているのか。私は、来た道を忘れた。

裏寂れた、道に出た。場末のスナックや、バー、カラオケの店が、ポツリポツリとある。何とも、いい感じである。

ある、アパートのような建物の、一階の扉に、会員制とある。ゲイスナックである。普通の男が、入らないように、ゲイバーには、会員制と、書かれているのである。

 

よし、と、私は、その扉を開けた、

おじさんが、一人いた。マスターである。

開口一番

ああーよかった、お客さんが来たわ

ここは、給料日が、5日なのよ、だから、誰も来ないと、思っていたのよ

 

この、おじさんお姉さんは、沖縄の人ではなかった。

栃木の人だった。