木村天山旅日


 

  バリ島再考の旅
  
平成21年
  2月
 

 第2話

飛行機は、翌日の朝、二時近くにバリ島・デンパサールに着いた。

深夜である。日本時間では、三時。

 

予約していた、車と共に、テラハウスをサポートする家族の、お父さんや、絵描きのマデさんも、一緒である。

申し訳ないと思いつつ、車に乗り込む。

 

ウブドゥまで、深夜であるから、昼間より、早く到着した。それでも、小一時間である。

 

一泊、250000ルピアのホテルを四泊予約していた。

円高で、一万円が、1300000ルピアである。昨年は、800000ルピアであるから、50万ルピアも、増えたということになる。

 

相変わらず私は、ゼロの多いのに、混乱する。

 

とりあえず、私は、ゼロを、二つ取り、1000ルピアは、10円と、計算した。

ホテル代は、従って、2500円である。

 

ホテルは、森の中のような場所という印象を受けた。

コテージで、大型のベッドが一つである。

 

深夜三時を過ぎていたが、目が冴える。

ただ、疲れていた。

 

今日は、昼過ぎ、完成した、テラハウスの、二階を見る予定である。

 

兎に角、ベッドに体を横たえて、うとうとする。

そのうちに、朝である。

 

二月は、バリ島の雨季である。

時々、スコールが降る。

朝方、雨が降った。

 

ところが、ホテルの横に川が流れていて、その音と、雨の音で、交じり合い、川の音なのか、雨の音なのか、解らない。

一日中、川音が、聞えるのである。

それに、朝昼夜と、それぞれの、虫や鳥の鳴き声が、交じり合うのである。

自然の音は、絶妙である。

それを、表現する言葉を、持たない。

 

朝、六時過ぎには、部屋の前の、椅子に腰掛けて、自然の音を体で聴いた。

 

朝一番のボーイさんが、働いている。

それぞれの部屋のポットを、回収して、また、お湯入りのポットを置いて行く。

 

それから、掃除のボーイさんたちが、落ち葉などを、拾い集める。

徐々に、朝の喧騒がはじまる。

 

ホテルの中は、世間から、隔絶されていて、大変、心地よい。

 

八時を過ぎると、部屋の担当のボーイさんが、掃除に来るのである。

いつもは、寝ているコータも、早起きで、部屋の前に座った。

バリコピを頼み、いよいよ、バリ島を楽しむ。

 

バリコピは、コーヒーの豆を挽いたまま、お湯を注ぐもので、少し待つと、その挽いた豆のカスが、下に落ちる。その、上を飲むのだ。

バリコピは、バリ島で飲むから、美味しい。

 

掃除のボーイさんは、英語が堪能で、話し好きである。

ただ、声が小さく、何度も、聞き直す。

私の英語は、なかなか通じない。

コータと話して貰う。

 

朝食は、部屋でも、ホテル入り口近くにある、オープンカフェでも、食べられる。

私達は、そちらに向かった。

 

お客は、まばらである。

混雑していないのが、いい。

バリ島の風を楽しみつつ、食べる。

 

今回は、四日目に、追悼慰霊を行い、そのまま、クタ地区に向かい、クタでは、はじめての、支援活動を行う予定である。

更に、これからの、バリ島での、予定を決める。

五月のコンサートツアーでの、公演の段取りである。

 

バリ島の

雨季の晴れ間の

花光る

虫の音川瀬

一瞬の夏

 

朝に鳴く

昼に鳴く音の

夜の音も

それぞれ違う

バリ島の夢

 

今回は、今まで見ていないバリ島の姿を見るべくの、気持で出掛けた。

これからバリ島で、活動するためには、何を理解すればいいのか。

更に、バリ島の伝統と、文化を守りつつ、我が事をする。

 

それは、現実であり、夢ではない。

 

観光の

夢見心地の

旅でなし

真実バリ島

真意を観る

 

その気持である。

 

昼前に、私達を、マデさんと、マルタさんが、それぞれバイクで、迎えに来た。

マルタさんは、テラハウス所有の家族である。

家を継ぐ、三男である。

バリ島では、一番下の男の子が、家を継ぐという、伝統である。

 

四人で、ランチを取ることにして、出掛けた。

地元の人にも、人気の、ナシチャンプルという、料理を食べる。

 

ナシチャンプルは、その店により、味がまるで違う。

とてもじゃないが、食べられるものでないものもある。

 

その店は、まずまずだった。

しばし、そこで、色々と話し合って、今回の予定を確認する。

 

いよいよ、テラハウスを見る事にする。

バイクの後に乗り、出発した。

バリ島は、地元の人も、観光客も、バイクに乗る。道は、それで、混雑する。

それに、車であるから、渋滞になる。

ところが、バイクだと、その合間を縫って走ることができるので、便利だ。

 

見慣れた道である。

クトゥ地区に、入り、少し行くと、テラハウスがある。

 

堂々とした、建物になっていた。

そして、二階部分である。

階段をあがり、声を上げた。

想像以上の出来栄えである。

 

立派な、多目的ホールと、別室が出来た。

バナナの葉に覆われて、バリ島の風、ふんだんに感じる。

 

二階から、周囲が見渡せる。

高い建物がないゆえに、見晴らしがいいのである。

 

ココナッツジュースを、頂きながら、暫し、感激していた。

そこで、家族の皆さんと、再会の挨拶である。

 

床には、蓆を敷いて、そこに座る。

 

何も無き

むしろの上に

花をまき

貧しき人の

もてなしの心

 

五月は、一階のがらんどうのホールで、コンサートをする計画である。