木村天山旅日


 

  バリ島再考の旅
  
平成21年
  2月
 

 第11話

バリ島にて詠める歌

 

手渡しと

決めたからには

最後まで

手渡すことを

行うのみか

 

善き事を

しているなどと

誰か言う

恥ずかしきかな

偽善に似たる

 

手渡しの

願いにこめた

この心

ただこの行為は

行為に帰する

 

手渡しの

願いにこめた

この心

我が名残ると

露も思はじ

 

手渡しの

願いにこめた

この心

大和心に

従うのみぞ

 

追悼の

慰霊も何も

その心

大和心の

発露なるべし

 

願わくは

世界を結ぶ

大和心

たゆたう心

あはれの心

 

あはれとは

言葉ならず

行為にて

あはれ心を

託すことなり

 

水を買った店にて詠む

 

双子なり

十七歳の

ワークだと

学校行けぬと

笑顔で言う

 

ホテルの庭にて詠む

 

バリ島の

猫が襲いて

鳥を食う

この世の地獄

しかと見たりて

 

テラハウスにて詠む

 

放し飼い

鶏多く

最高の

ご馳走はそれ

スープなりと言う

 

ゴミはなし

自然のものは

すべてそれ

自然に戻ると

バリニーズ言う

 

昼下がり

突然引き裂く

鳥の音は

自然の痛み

あるが如くに

 

バリ島の町を歩きつつ詠む

 

売春を

せぬ誇りあり

貧しさの

誇りもありて

バリニーズあり

 

暑さにて

疲れたること

足元に

確実にあり

歩みは遅し

 

生まれ来て

乞食の心

宿りしか

幼き子らは

ただ手を伸べて

 

女装者に

気をつけよと

言う心

元は男で

力あるなり

 

上民は

異国の人か

下層民

現地の人か

搾取されたり

 

立ち去らぬ

訳はチップを

求めては

悲しきことの

凄まじきかな

 

料金を

払った直後

チップをと

求めた十六

無学なる嬢

 

支援物資が無くなりて詠める歌

 

差し上げる

物が無くなり

佇みて

ただ見つめあう

我と子らと

 

手渡しの

支援のそれは

儚くも

大和心の

あはれとぞ知る