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ある物語 49 

ある物語

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第四九話


そして、その秋、私は翌年の横浜リサイタルのことを思案していた。
即、行動する。
 
みなとみらいホール・・・
有名なホールである。
そこに電話をした。
 
空いている日ならば、申し込みできるということだった。
ホールに出向く。
 
なるべく早くとの思いで、空いている日をすべて教えてもらう。
二月に空いている日があった。
その場で決めた。
 
2002年、2月である。
その日も、忘れられない日である。
 
今までで、一番高い料金のホールである。
 
また、迷うことなく決めた。
そして、藤岡に話す。
藤岡も、そんな立派なホールでと、感動していた。
 
すると、即座に、チラシである。
それは、私が作った。
半年もないのであるから、急いだ。
 
手作りのチラシである。
ワープロを使い、何とかして、見栄えよくと思ったが・・・
 
やはり、それは、見事に素人のものだった。
それでも、色々なところに配布した。
その配布も、私が一人でした。
 
後で、藤岡のお弟子さんだった、辻友子さんに聞くと、一番目立ったチラシだという。他のチラシは、とても豪華に作ってあるが、一番目立ったのである。
つまり、そんなチラシがなかったから・・・
 
今思い出せば、黄色の紙を使って、モノクロである。
 
実に懐かしい。
 
そうして、着々とリサイタルを続ける。
 
更に、その時までは、自分でCDを作るということも、思わなかったのである。
そんな世界は、皆目検討がつかない。
 
藤岡が、手作りのCDを、私の札幌のお弟子さんたちに、少しばかり販売した程度である。
 
それから、新潟、札幌公演を続けた。
藤岡は、それらを記録録音していた。
それが、後で役に立つのである。
 
その頃、藤岡は、師事している先生から、とても認められていた。
何か、先生が色々と考えているということを聞いた。
それも、励みになったのである。
 
その先生の元でも、多くの出会いを作っていた藤岡である。
そこから、伴奏者や、グループレッスンしている方々とも知り合いになる。
 
新潟、札幌では、更に、翌年のコンサートを計画していた。
もちろん、東京も、横浜も、である。
 
ひとつ終われば、また一つ。
これが、延々と続くことになる。
 
そして、更に、依頼コンサートもあった。
その度に、私も一緒に出掛けた。
そこで、また、色々な人に出会うのである。
 
その中で、東京から千葉県にある、あるパン屋さんが主催するコンサートにも主演した。何度か出演して、その社長とも、親しくなるが・・・
 
問題があった。
応援してくれるが、何となく、田舎臭いのである。
つまり、軽薄な感動屋さんだった。
 
そして、仲間意識がとても強い。
つまり、地方などで活躍する場合は問題ないが・・・
 
藤岡のように大志を抱く者には、少し抵抗がある。
もちろん、私も抵抗があった。
 
その町で、リサイタルをしようと思った際に、それが、現れた。
つまり、それでは、町の仲間を集めて、みなで話し合って云々・・・
 
いや、そういう問題ではない。
更に、終わった後で、感動して皆で抱き合うようなもの・・・
そんなものではない。
 
何度かの話し合いで、終に、藤岡も私も止めることにした。
コンサートの後に、打ち上げで、二次会、三次会も付き合い・・・
そんな、関係を築くためにしているのではないのである。
 
地方都市の人たちに、そういう人が多いのである。
 
それが、人間関係だと、思っている。
芸で感動させるのが、芸人であるから、その後の付き合い云々の問題ではない。
 
コンサートを聴きにきても、舞台の雰囲気を、打ち壊す人がいる。
ホールの前で見送る出演者と、延々と話しをしたがる人たちである。
 
簡単に言うと、デリカシーが無いのである。
自分一人だけがいると、思っている。
 
他のお客さんも、挨拶するのを、待っている・・・
そんなことは、お構いなしなのである。
 
折角の、コンサートの雰囲気を台無しにする。
だが、本人は気づいていない。
 
最初は、私も、どうしたらいいのか、戸惑っていた。
だが、そのうちに、藤岡が、うまくあしらうようになった。
 
 


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