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ある物語 61

ある物語

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第61話


ミュージカルの話を書く。
 
いよいよ、本番を迎える二日前に、本番と同じリハーサルが行われる。
藤岡に付き添い、私も出掛けた。
 
更に、ホールロビーに、藤岡のブースを出すことにしていた。
コンサートチラシ、藤岡のCDなどである。
 
私は、舞台裏から、舞台、そしてホールロビーを確認した。
そして、藤岡と共に、共演する出演者たちの楽屋を廻り挨拶する。
 
有名俳優などもいた。
だが、私はあまり知らない。
テレビを見ないということもあったが・・・
 
兎に角、挨拶を終えて藤岡が楽屋に入り、化粧が始まった。
私は、その間、一人でホール全体を見学していた。
 
後に、そのホールの小ホールを利用することになるのは、そのせいである。
 
場所は、新宿である。
駅から歩いても辿りつく距離である。
 
そのような大舞台を見ることが無いので、とても参考になった。
 
さて、リハーサル開始である。
私も、客席に座り見ていた。
 
迫力のある開始であり、とても華やかである。
リハーサルは順調に進む。
そして、藤岡の出番が来た。
 
大音響と共に・・・
そこまでは、いい。
が、藤岡の歌が始まると、音響の方が大きいので、声が聞き取りにくいのである。
 
そこで、私が声を上げた。
地声が大きいので、音響係りの人たちが、驚いた様子である。
 
声が聞えない・・・
と、言った。
彼らは、慌てた。
 
一体、何者なのか・・・といった雰囲気は無し。
ただ、私の声に、俊敏に行動した。
 
とりあえず、舞台の流れは続いたが・・・
 
舞台監督・・・その他の人たち・・・
単なる、付き人の私が声を上げたことなのに・・・
とても、驚いた様子である。
 
怖いもの知らずなのである。
まあ、兎に角、改善されたので、納得。
 
藤岡も舞台で、私の声を聞いたと言ったが、何も言わなかった。
 
大魔王の出番は、二度である。
その二度の出番を最大限に生かすという・・・
 
リハーサルが終わった。
私も、舞台裏に行って、それぞれの役の人たちと会釈しつつ、藤岡の楽屋に入る。
 
主役、準主役の人たちは、練習の際に会っているので、顔見知りだ。
 
最後に、プロデューサーと挨拶して、横浜に戻ることにした。
電車に乗るのは、まだ抵抗がある。
 
パニックはほとんど無くなっていた。
薬のお陰である。
これが、精神論で、治そうとしたら・・・
とんでもなく、時間と労力がかかっただろう。
 
藤岡は、舞台に慣れているので、何の問題もない。
楽しい・・・と言うので、これからも、こういうのやったらと、私が言うと、頷く。
 
全く、別の世界である。
クラシック以外の世界である。
身の置き所が違うのが、新鮮のようだった。
 
ただ、それが終わると、すぐに、またリサイタルが始まる。
藤岡の機転は、凄いものがある。
さっと、その変化に対応する。
 
まあ、兎に角、三日間の舞台であるから、健康第一である。
私も、毎日、藤岡と舞台に通うことになる。
 
その日は、食事も、結局、部屋に戻り食べるという・・・
藤岡の徹底振りである。
 
私は、面倒なので、何処かで食べて行きたいと思うが・・・
 
三日間で、七回公演になる。
そして、最終日は、打ち上げである。
それも、初日に言われた。
藤岡も私も参加することにした。
 
兎に角、その三日間は、それのみに集中するという。
私も、ロビーにて物売り、藤岡のコンサート情報を配布する。
 
舞台裏と、ロビーを行ったり来たりと結構疲れた。
顔見知りの人たちも、客としてやって来た。
 
その人たちとのお話である。
藤岡は、一切、ロビーに姿を現さなかった。
それで良かった。
余計な気を使わずに済む。
 
次の舞台の間の時間は、少しばかり外に出て、藤岡とお茶を飲んだ記憶がある。
 


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